【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
第二章 見張り
「まっ、

またきばりや~」



「…はいぃ…」


朝日喜は、
ふ抜けになりそうになった。


――…



「今日は【見張り】や」


「み、見張り…ですか?」

「これは仕事やない」

「へっ?
じゃあ御給料は?」

「あるわけがない」


「そ、そんなぁ~」


「たまらんな~、残念。
たまるのは借金の額か」

城頭八は、高笑う。


「…なんの見張りです?…」


「賭博や」


「と、賭博っ!…」


「それと薬や」


「薬…

…あのー…

それはヤバイことじゃないんですか?
警察捕まりますよ…」


「だから貴様が見張りやるんやろ?」


「そ、そんなっ
私も片足つっこむみたいなコト、
私は素人ですからっ関係ないです…」


「打たれんだけ、
マシやろ?」


城頭八のドスのきいた低音に、
朝日喜は黙る…


「それにしても、」


「は、ぃ?」


「朝日喜 昇(あさひき のぼる)って、」


城頭八が噴きだし笑いをする。


「めでたい名前やなぁ~」


「へっ、そうですか?
ど、どうもです」



「朝日に喜んで昇る~て、
ブタもおだてりゃ木にのぼる~~~やなっ」


「そ、そんなぁ…

今めでたい名前言うてくれたやないですか…」


「めでたいやんっ」


「…ふぇっ…」



朝日喜は、やるせなさにうなだれていた。
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