【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
夜明け前の暗がり

住所と地図を頼りに、来たことのない見知らぬ土地を歩く。

住所を辿り歩いていくと、一件の
大きな屋敷に着いた。

和風の
とても古い屋敷。

「こ、ここ?だ、大丈夫かなぁ…」

朝日喜は、とりあえず木の門戸を叩いてみた。

と、その拍子に戸が開いた。

― キィー… ―


「あっ…

あのー……ごめんくださいー…」

恐る恐る中を覗いてみる。

木々の生い茂る
広い庭が見える。

人の気配はなく、静まり返っている。

「大丈夫かなぁ…
不気味だなぁ…」

朝日喜が躊躇していたその時、

「どなたはん?」

可愛らしい女性の声がした。

振り向くと、

「へ、あっっ…」

まごつく朝日喜の目の前に、可愛らしい舞妓さんがいた。

「何か御用事どすえ?」

「あっえっ…あっ…」

「?」

「朝日喜 昇と申します!お仕事にっ、参りました」

「あ、お仕事で」

「は、はいっ」

「どうぞ~、お入りやすぅ」

「あっはいっ」


可愛らしい舞妓さんに、生唾をゴクンと飲み込みながら、
朝日喜は、後ろからついて中に入っていった。


< 3 / 27 >

この作品をシェア

pagetop