【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
「おおきに、お客はん。
あっ、お客やおましませんね、すみません、
旦はん」

「い、いいえ」


「終わったかぁ」

「はっはい」

女将が部屋に入ってきた。

慣れない場所と指の痛み、
そして、
ヨソの部屋から
ずっと聞こえっぱなしだったアエギ声への我慢に、朝日喜はやつれきっていた。

「ほな、ご苦労さん」

「はい」

朝日喜がお辞儀をすると、女将は部屋から出て行く…

「あれ?…あの!」

「ん?」

女将は振り返る。

「何や」

「あ、あの、報酬を」

「ん?」

「仕事は終わりですよね?」

「あぁそうや、今日はな」

「へっ?今日は?」

「そうや~明日もやろ」

「あっ明日も?」

「そうや、明日も明後日もや。
城頭八はんから十日と聞いてるさかいに、
後九日、
みっちり働いてや~。
仕事は今日のと同じやさかい、いっぺんしたからわかるやろ?」

「えっ、…九日って?」

「わかるか!わからんのんか!!」

「わ、わかります」

「ほなっ、頑張りやっ」

「は…はい…」

「あっ!」

「はいっ」

朝日喜は、ビクリと返事をする。

「くれぐれも、
うちの大事な娘たちに、手は出すでないよ。
もし、
したら、

その時は
あんたの命はないからね」

「い、!?はいぃーっ」

そして、
朝日喜は十日間、

少女から熟女、五十人数多の体を指圧した。

その間、
隣の部屋やら遠くの部屋やらどこからともなく
声は違えどひっきり無しに、女性のあえぐ声は聞こえてき…

男盛の朝日喜は、
どんなに指が痛く疲れ果てても、
一睡もすることができなかった…

― 一体、ここは何なんだー… ―

十日目最後の日に、
朝日喜は、
最後に指圧した
十くらいの少女に聞いてみた。

すると、

「兄はん、

そんな…恥ずかしい。

おなごと殿方の
夜の秘め事…」

そう言って、

十の歳とは思えないほどの妖艶さを見せた。

「なっ!?…なんや…」
朝日喜は、生唾を飲んだ。
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