【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
「ありがとうございました」


朝日喜はやつれ果てて、
妖艶な屋敷の仕事場を後にした。


十日分の給料を手に



疲れたやら…


女のあえぎ声が気になって眠れなかったやら…


一日…何時間労働になるんやろ


それも もぅ


考えられません



――――…



朝日喜は、
もらった金を手に、
城頭八の待つ事務所へ向かった。




「ほぅ。

ちゃんと来たな」


「はいー…」



朝日喜は、
金を手渡した。



「はい。
ご苦労さん。


借金残額、百万やな」


「へっ?」


「へっ?って、

へっ?ってぇ、

オモロイ顔して

まぬけや」


「まぬけって…

あの」

「なんや」


「あ、いや、

十万返しましたよね」

「おぅ、それがどうした」


「いや、あの…

百万借りて、

十万返しましたのに、

残額減ってないやないですか…」


「当たり前やっ」

「へっ?な、なんで…」

「あんたが払ったの利子分や。

ゆうたやろ?

トイチやて。


十日で一割」


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