伝えたい言葉

15歳、恋をしました。

カラオケボックス。青い証明が涙で濡れたあたしの顔を照らす。

「諦めよっかな」

ボツリと呟いた。でも隣の綾子にすら聞こえていない。

「可愛く生まれたかった、てかもうやだ。私、自分が嫌い…。」

マイクの電源が入ったらしく、口元に持っていったマイクがあたしのか細い声を拾う。

「そんなこと言っても仕方ないでしょ」

はっきりとした物言いの綾子の励ましの言葉。それさえもなんだか馬鹿にされているみたいで、腹が立つ。「他人事だと思って」と文句を呟くと、一つ深い溜め息を吐き、綾子は手に持っていたドリンクを飲み干した。

「先輩のメルアド。教えてあげたじゃん」

携帯に目をやる。光ってはいない。誰からもメールが来ていないから光らない。今まではそんな事、気にしなかったし数週間、誰からもメールが来なくても何とも思わなかった。
前のあたしはどちらかというと淡泊な女だった。

なのに。

あたしは変わってしまった。

「挨拶メールはちゃんと送ったし返信ももらえる。」

「いいじゃん。」

「あたし…何すればいいかわかんない…先輩に…嫌われたくない…」

15歳。女子高生になったあたしは恋をした。

一歳上の先輩。
放送部。

一目惚れだった。
外見より、先輩の雰囲気が好きになった。
気づけば、毎日少しずつ先輩が大好きになっていて、どこが好き!とかじゃなくて存在が、先輩の周りの全てが輝いて見えた。

「メール返信はあるけど先輩に話し掛けられないっていうか…」

「なんで?普通に話し掛ければいいじゃん。」

綾子と先輩は仲が良い。綾子の生まれつきの人から注目を浴びる明るい性格はあたしも好きだ。だけど綾子には裏表がある。
あたしは綾子が仲良しの亜依の事を裏では妬んでいて、機嫌が悪いと、とことん悪くなることも知ってる。

「綾子みたいにみんながみんな、上手く嫌な事を避けられない。」

あたしは綾子の性格が決して万人に好かれるものじゃないって分かってる。でもそれでも綾子は彼女の16年間を上手く悪いところを隠して生きてきた。
あたしはそれが妬ましい。
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