真実を嘘だと言い聞かせた僕ら。
『お嬢、晴馬は?』
「結構前に買い物に行きましたけど…」
『…そうか。……お嬢』
「は、はい」
私を呼ぶ低い声がなんだか深刻なイメージを漂わせた。もしかして、晴馬に何かあったの…?
『お嬢。落ち着いて聞いてくれな』
あぁ。
絶対、あったんだ。
確かに買い物の割にちょっと遅い気がする。
何があったの?
事故?事件?
医者の上條さんが電話してくるってことは…?
『お嬢』
「は、い…!」
震えをこらえて上條さんの言葉を待った。
やがて、息を吸う音が聞こえた。
だが、上條さんの言葉は、全く予想外な応えだった。