BLUE
「…泡になって、消えようとしていただけよ」


少し、ロマンチックだったかな。
そう思いつつも言った私の言葉に、彼は目を少し驚きで開くとまたふっと笑い、口を開いた。


「…お前、何?」
「人魚。…て言ったらどうする?」


見つめあった視線は互いに逸らさないまま時間が経つ。
やがてその沈黙を青年が破った。


「…本当にそうかもな」


こんなにも綺麗なんだから、そう続け海水に濡れた手を私の頬に滑らす。
不思議と、自分の心は冷静だ。


「あなたは?」


その問いに笑顔をはりつけたまま、答えは返ってこなかった。

端正な顔が近づいてくる。
黒い瞳に吸い込まれるように見つめ合ったまま、私も彼へと近づいた。

重ねた唇は、冷たい。

でも、吐く息は、熱かった。
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