君を好きになって
gonna
20xx.11.20
「はぁー・・・。」
どうしてこんな日に限って、春物のトレンチコートを着てきたんだろう。
木枯らしなんて言ってられないほど、強風だ。
頬に張り付く髪はいい加減うっとおしいほど、縦にも横にも纏わりつく。
高層ビルが所狭しと立ち並ぶこの景色も、4年の月日が流れればもう見慣れたものだ。
季節は冬に向かっての準備を忙しなく整えるように、風もぐぐっと冷え込んでくる。
高宮、27歳。性別:女、ちなみに、中小企業の事務職。出身地は、この大都会と真反対の景色な長閑な田舎、とでも言っておこう。とりあえず、田舎者で間違いない。
だからこそ、生まれた土地にはないモノがたくさんある都会に行きたかった。
その中で、人ごみにものまれない颯爽とした雰囲気を醸し出し、軽快な足取りとスーツを着こなしたバリバリの(少々古臭い言い方ではあるけれど)キャリアウーマン、なんてものになってみたかった。
いかにも仕事が出来る女って感じで、カッコイイひと。
私はずっと、そんなものに憧れを抱いていた。
誰も自分のことを知らない環境の中で、自立して、やりがいのある仕事について、大好きなものに囲まれながら生活する。
そうしたらきっと、周りの人からもカッコいいって思ってもらえるような気がして、
そんな単純な理由だけで、この場所を選んだまでだ。
だけど、人生そんな甘くない。