残骸
 大学を出て上京して就職し、安アパートながらも住めば都な我が家だった。

 手狭な家だったけどいろんな思い出があった。

 初めての一人暮らし、立て付けの悪いトイレ、水はけの悪い風呂、水が漏れる蛇口、風でよく落ちる窓の洗濯物、初めての彼女との生活……別れ、一人酒とテレビ、時間つぶしのゲーム、お気に入りのAV、棚に飾った表彰、親から貰った品、思い出の写真、預金通帳……何もかもが燃えた、燃えた、燃えた、燃えてしまった。
 
 モクモクと白い黒い煙を吐き出して、赤い白い黒い炎が天を焦がしていた。
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