Brother Short Story's
その日から、ちょっとした事でリキと静流はメール交換をした。
『雲がウサギ』とか『腹減った』とか、本当に他愛ない事を、たくさんたくさんメールする。
そんな事を1ヶ月程続けたとき、偶然椎葉の誕生日が夏休み直前の海の日だと知った。
リキはすぐにその日を予約したかったけど、誕生日に彼氏でもない男と過ごすわけないと思い、その前の週の土曜を予約した。
その日は偶然、静流の住む隣町の花火大会の日で、リキはそれに行くことにした。
もちろん、静流もそれを了解して浴衣姿で現れて。
白地に紫の蝶が舞う浴衣、綺麗に結い上げられた髪、白いうなじ。
リキは何とか理性で抱き締めたい欲望を押さえ込み、そっと手を差し出す。
「よかったら、どうぞ」
いつもと違ってリキは眼鏡を外し、前髪を上げ緩く遊ばせた髪、薄いピンクのTシャツ、カーキ色のカーゴパンツ。
静流は普段着姿のリキを見て、少し概視感を感じていた。
どこかで見たような気がする、けど…。
それが、いつどこだったか思い出せずに、そっと差し出されたリキの手を取った。
お祭り会場までゆっくり歩きながら、少し後ろからリキの顔を見つめ、いつ見たんだろうと考える。
知らず知らずのうちに、静流は繋いでいる手に少し力を込めていたらしい。
リキは後ろを振り向き、目を合わせると、
「足、痛くなった?」
やっぱり甘い声で問いかける。
静流は「大丈夫」と少し微笑んでから、リキに聞いてみた。
「ねえ、高瀬くん。私達、どこかで会ったことあるよね…?」
おそるおそる、そう問いかける静流をみて、リキは優しく目を細めて。