Brother Short Story's
「やっと、思い出してくれた?」
リキは嬉しくなって、ゆるゆると口角をあげ、軽く首を傾げる。
「一年前、図書館でね」
リキがそう答えると、静流は少し過去を探るように目を泳がせ、「あ!鍵無くしたときだ!」と大きな声で叫ぶ。
「正解」
ふふ、とリキが笑えば、静流は「普段着で会わないとわからなかった…」と少し残念そうに眉を下げた。
「しょうがないよ、あの時から、身長も十センチは伸びたし、髪型も違うしね」
と、いたずらっぽく笑うリキに「ごめんね、あの時はありがとう」と、しゅんとした声で静流は言う。
リキはそんな静流の手を少し強く握りしめ、軽く自分の方に引き寄せた。
急に引っ張られた静流はバランスを崩し、リキの胸に抱きつく形になって、自分とは違うがっしりした体つきに、心臓がバクバクと音を立てる。
「あの時に椎葉を見て、潤んだ瞳が印象的で、入学式で見かけて超ビビった。
ずっと、椎葉だけを見てきたんだ。
俺が甘やかしたいと思うのも、触りたいって思うのも椎葉だけ。
椎葉は、俺のこと、キライ?」
甘い甘い声で、優しく囁けば、静流の顔から首まで真っ赤になる。
いきなり告白らしき事を囁かれた静流は、
「高瀬くんが、好き…」
と聞こえるか聞こえないか位の小さな声でそう答える。
それを聞いた瞬間、リキは背中に手を回し、ぎゅっと静流を抱き締めた。