Brother Short Story's
その声は、少し高めで少し震えていて、本当に今にも泣き出しそう。
それから、女の子と一緒に鍵を捜すと、鍵は一番に捜したはずの女の子のカバンから出てきて。
女の子は一瞬にして真っ赤になった。
その様子が可愛くて、リキは知らず知らずのうちに、目を細めて笑っていた。
「ありがとうございました」
女の子は、勉強道具が入っている大きめのカバンを肩に掛け、頭を下げて帰って行った。
リキは軽く手を挙げて女の子を見送り、はあ、と息を吐く。
――真っ黒な瞳が可愛い子だったな。
そんな記憶がリキの中に残り、それから暫く、女の子の事は忘れていたのだった―――。