Brother Short Story's
それからリキは出来るだけ目立たないように、そして静かに静流を観察していた。
静流は男女問わず誰にでも優しくて、少しおっちょこちょいで。
いつもほのかと言う子と一緒。
そんな観察を2ヶ月程続けたある日、リキは体調を崩し顔を机に伏せていた。
頭がガンガンする。
リキが腕を動かした拍子に、机の端の置いていた眼鏡が音を立てて床に落ちた。
「あぁ、もう…」
眉間にしわをよせ、頭を押さえながら眼鏡を拾おうと手を伸ばすと、リキの手より一足早く、誰かの手が眼鏡を拾いあげた。
眉間にしわを寄せたまま目線をあげると、静流が眼鏡をそっと差し出す。
「大丈夫?高瀬くん、具合悪いの?」
以前聞いたのとかわりない少し高めの声で、リキに問い掛けた。
リキは心底驚いて、思わず目を見開いた。
「ちょっと、頭が痛くて」
小さな声でそう答えれば、何やらごそごそとポケットを漁り、白い錠剤を2錠リキの手にそっとのせた。
「頭痛薬。ちょうど持ってたの。アレルギーとかなかったら、使ってね」
そういって、自分の席に戻って行った。
リキは、静流にもらった薬を水道の水で流し込み、その日は早退したのだった―――。