My dear lady !
Prologue
お屋敷を出るとき、ベンツに乗ろうとしたら、清掃係の咲良さんに止められてしまいました。
この辺りは道端が狭い上に、外車を見慣れていない方々が住んでいる住宅街だから、目立ってしまうらしいのです。
だけど、咲良さんの言うとおりにして正解でした。
庭師の徳さんに借りた軽自転車のボディがコンクリートの塀にいまにも触れてしまいそう。
どきどきしながら、外を見ていたので、じいの声が耳に入りませんでした。
「…様、お嬢様」
何度も呼ばれたところでようやく気が付きました。