純恋〜スミレ〜【完】
「はい。どうぞ」
あたしはモモちゃんにクマの人形を手渡した。
「じゃあ、お姉ちゃんにこのクマちゃんあげる。あと、これも……」
モモちゃんはそう言うと、ポケットから取り出した飴と自分が持っていた水色のリボンのクマをあたしの手の平に乗せた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!!このお人形ね、お友達のりっちゃんにあげるの!!」
「見舞いに持って行ってやったら、友達もきっと喜ぶな」
「うん!!」
優輝はモモちゃんと同じ目線になると、モちゃんの頭を優しく撫でた。
ん……?ていうか、お見舞いって……。
モモちゃんの友達、具合悪いの?
「モモちゃんのお友達のりっちゃん、病気なの?」
「うん!!りっちゃん肺炎になって入院してるの!だからモモがクマちゃんを持ってお見舞いに行ってあげるんだ」
「……そっか。りっちゃん、喜ぶね」
「うん!!りっちゃんが退院したら、このクマちゃんで一緒に遊ぶんだ~!!」
あたしと優輝はモモちゃんとモモちゃんのお母さんに何度もお礼を言われた。
モモちゃんがピンクのリボンのクマをあんなにも欲しがっていた理由。
それはただのワガママなんかじゃなくて。
自分のためではなく、大切な友達のためで。
それを知って胸の中がポカポカと温かくなった。
人を想う心ってあんなにも綺麗なんだ。
あんなにも真っ直ぐなんだ……。