純恋〜スミレ〜【完】

「これでよかったか?」


「うん。ありがとう」


ベンチに腰掛けて優輝が買って来てくれたオレンジジュースを受け取る。


公園内に人はまばらで。


駅に向かう高校生や会社帰りのサラリーマンが公園の中をショートカットしていく。



「……あ」


ポケットの中に手を突っ込んで何かを取り出した優輝。


その手にはグシャグシャになった赤マルの箱。


「ありえねぇ……。最後の一本だったのに」


「もうないの?」


何気なく放った一言。




あれ……?


その時、妙な違和感を感じて。


あたし、この光景を夢で見た。


この公園で、優輝とベンチに座って、煙草の話をして……。


今の会話だって夢と全く一緒。


正夢……――?


これって夢が現実になったってこと?



< 118 / 487 >

この作品をシェア

pagetop