純恋〜スミレ〜【完】
「それ、いつですか!?」
「一週間前。俺が純恋ちゃんを海に誘った日」
「……まさか……」
「俺、あいつに初めて平手打ちされたよ。今までの叶恋は何かあるとすぐメソメソ泣いてたけどあの日は違った」
ヒロさんは苦笑いを浮かべながら、取り出したタバコに火をつける。
フワフワと空に浮かぶ白い煙。
「『別れよう』って言われて、俺もヤケになってさ。純恋ちゃんを海に誘ったって話したら、あいつ急に怒りだしたんだ。『お姉ちゃんを傷付けたら、あたしが絶対に許さない』って怒鳴られたよ」
「叶恋が……そんなことを?」
「そう。あいつにとって純恋ちゃんはかけがえのない存在なんだよ。俺は純恋ちゃんを越えられなかったみたいだ」
ヒロさんは吹っ切ったようにクスクスと笑う。