純恋〜スミレ〜【完】
「あたしね、お姉ちゃんの言いたいことちゃんと分かってたの。だけど、やっぱり認めたくなくて」


「叶恋……」


「ヒロとはよく女絡みのケンカしてたし、いつかはこうなる気がしてた。でも、別れられなくて。あたし、バカだよね……」


弱々しくそう呟いた叶恋の体をギュッと抱きしめて、その背中を手の平でなでる。


優輝があたしにそうしてくれたように、叶恋の話に黙って耳を傾けた。



今の状況、数ヶ月前のあたしによく似てる。


達也と別れたあの日、あたしは泣くことも出来ずにいた。


泣けばいいのに、あたし。


悲しくて、切なくて、苦しくて。


どうしようもないほど胸が締め付けられていたのに、


涙が出てこなくて。


誰かに背中をポンッて押されただけで、倒れてしまいそうなほど落ち込んでいたくせに。


それを知られたくなくて、自分の気持ちを押し殺して必死に唇を噛み締めてた。


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