純恋〜スミレ〜【完】
「フフッ……、ごめんね。もう優輝の話はやめる。でも……――」
急に顔を上げた麗華さんは何故か勝ち誇ったような表情であたしを見つめる。
一体なんなの……?
その時、ポケットの中に入れておいた携帯がブルブルと震えているのに気が付いて。
誰だろう……。
ポケットから取り出して、テーブルの下で開くと、ディスプレイには『優輝』の名前。
出たほうがいいと思ったけれど、麗華さんの意味深な笑みが気になって仕方ない。
優輝には店から出たら折り返しの電話を入れよう。
あたしは震え続ける携帯を元の位置に押し込んだ。
「でも、なんですか?」
「でも、最後にこれだけは聞かせて?純恋ちゃんは優輝にお兄さんがいたの、知ってた?」
テーブルに肘をついて、手の平に顎を乗せる麗華さん。
「……いえ、知りません」
あたしが首を横に振ると、麗華さんは「そう……」と呟きながら、嬉しそうに何度も頷いた。