純恋〜スミレ〜【完】
≪To 優輝 あたしのことはもう忘れて?あたしも優輝のこと忘れるから。今までありがとう≫
震える指先でつくった絵文字のないシンプルな返信メール。
これを送れば、あたし達の関係は終わる。
もう二度と、
優輝とあたしは……――。
「……――っ」
とその時、頬に感じた違和感。
顔を持ち上げると、空には嵐を感じさせる黒々とした雲。
ポツリポツリと降り出した雨は、一瞬で激しくなる。
「……――タイミング悪すぎだよ」
意を決して送ろうとしたメール。
そのメールを送る前に、優輝はそっとベンチから腰を上げた。
名残惜しそうにベンチを振り返る優輝。
あたしは雨に濡れながら、優輝の後ろ姿を目で追い続けた。
優輝が振り返ってしまわないことを願いながら……――。