純恋〜スミレ〜【完】
走って、走って、走って。
息が切れるのもお構いなしに走り続けて。
差していたビニール傘は強風に煽られて、骨組みがボキッと折れてしまった。
降り注ぐ雨は、あたしの体温を容赦なく奪っていく。
それでも、あたしは一心不乱に走り続けた。
優輝がこんな雨の中、駅前公園のベンチに座っているとは思えない。
あたしを待っているはずもない。
それなのに、どうしてかな……。
どうしてあたしは駅前公園に向かっているんだろう。
「……――ハァハァハァ……――」
公園の入り口で膝に手をついて、呼吸を整える。
辺りには地面を叩きつける雨音だけが響き渡る。
あたしはフゥと一度息を吐くと、顔をグッと持ち上げて公園に足を踏み入れた。