純恋〜スミレ〜【完】
優輝はずっとあたしに『会いたい』と言ってくれていた。
その言葉を嘘だと割り切ってしまうのは、すごく簡単なことで。
だけどそれは、ただ単に逃げているだけ。
一方的に連絡を断ったのも、あたしが優輝から逃げているだけ。
優輝はいつだって真っ正面からあたしにぶつかってきてくれた。
諦めず、何度も何度も……――。
苦しいのはきっと、あたしだけじゃない。
優輝だって押しつぶされてしまいそうなほど、苦しいんだ。
苦しんで、苦しんで、苦しんで。
それでも、優輝は手を伸ばしてくれている。
力を振り絞って……――。
今度は、あたしが勇気を出して優輝にぶつかっていく番かもしれない。
優輝にグッと手を伸ばす番。
ねぇ、お兄さん。
あたしの声は聞こえますか?
あたし、もう一度優輝の手を掴んでもいいですか……?
お兄さん……勝手なあたしを許してくれますか……?