純恋〜スミレ〜【完】
『優輝……女の子は……?』
「兄貴は自分の身をていしてまでも、目の前にいる女の子を助けようとした。だから俺は何度も言ったんだ」
『女の子なら大丈夫だ』
「兄貴は俺の言葉を聞くと、ホッとしたような表情で微笑んだ。それが俺が見た、兄貴の最後の笑顔だった」
救急車に乗せられて病院に着く頃には、お兄さんはもうピクリとも動かなくて。
優輝は涙を流しながら、徐々に冷たくなっていくお兄さんの手を握り続けた。
死ぬな、死ぬな、死ぬな……――。
兄ちゃん、死ぬな!!!
心の中でそう叫びながら。