純恋〜スミレ〜【完】
男の子の大きな背中をジッと見つめていると、「チッ」という舌打ちが聞こえて。


「……?」


首を傾げると、男の子は「先買って」と順番を譲ってくれた。


「どうも」


不思議に思いながらもペコっと頭を下げて、アイスコーヒーとオレンジジュースを買う。


その時何気なく男の子を見ると、彼は眉間に皺を寄せてお財布の中を漁っていた。


前髪の間から覗く整った綺麗な顔。


うちの学校にいたら、間違いなくモテる部類の男の子に入る。


叶恋の学校にこんなイケメンがいたなんて知らなかった。


これだけのイケメンなら、叶恋も知っているかもしれない。


後で聞いてみようかな。


そんなことを考えていた時。



「……――ありえねぇ」


男の子が自販機に差し込んだ1万円札がそのまま戻ってきた。


差し込み口の横には≪札切れ≫の表示。

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