純恋〜スミレ〜【完】
「さっ、そろそろ帰ろうかな」
「……――ああ」
閉じていた目を開けて、隣にいた優輝に声をかける。
すると、ぼんやりとどこかを見つめていた優輝はハッとした表情を浮かべた後、慌てて頷いた。
「そういえば、優輝ってどこに住んでるの?」
「俺?こっからそんなに遠くない。純恋は?」
「あたしもここから歩いて30分くらい。ていうか、優輝の家ってここから遠くないんでしょ?駅に向かう必要なかったじゃん」
駅に行くついでって言って花屋までついてきたのに。
疑問を口にすると、優輝はしれっとした表情でこう答えた。
「今から家帰るなんて言ってないだろ。つーか、歩いて30分って結構遠くね?」
「う~ん……でも、あたし歩くの好きだから」
それに、今はぼんやりと歩きたい気分。
「もう遅いし、家まで送ってやるよ」
「……――え?一人で帰れるって」
「いいから」
「だけど……――」
「ほら、いくぞ」
優輝はそう言うと、あたしに有無を言わさず歩き出した。