ひとりだけ。
『ふーん。まぁ別にいいけど拾ったからには返さないとね』


由香はニヤニヤ笑いながらあたしの反応を楽しんでいるようだった。


握り締めた指をそっと開き指輪を見て、由香にバレないようにこっそり人差し指にはめてみた。


当たり前にサイズは合わなくてブカブカだった。


その時彼らのステージは終わり楽屋へと戻っていくミサちゃんに軽く手を振ると視界に彼が入った。


じっとこっちを見つめているように見えた…


あたしははっとして人差し指から指輪を外し何食わぬ顔で指輪を見せ、これ?と無言で合図した。


彼は少し微笑みうなずいた。


ちゃんと返しにいかないと…

あたしはまたきゅっと指輪を握り締めた。




もしも、もしもね。
この時指輪なんて飛んでこなければ…

あなたの事なんてすぐに忘れていたのかも知れない。

でも偶然飛んできた指輪にちょっとだけ運命を感じたんだ…
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