ひとりだけ。
タバコに火を付け受け取った指輪をまた人差し指にはめていた…
あたしでも緩かったあの指輪は彼の指でも少し緩いみたいだった。


『それ、拾ったお礼にちょうだい?』


…思うよりも先に口から出ていた。
しかも拾ったお礼にって意味がわからない…


さすがの由香もびっくりしていたがそれを言ってしまったあたしが一番びっくりだった。


少し笑いを堪えるような彼を見てあたしは恥ずかしくなった。


煙があたし達にかからないように吐き出す。

彼のタバコの、セブンスターの匂いがした。


『気に入ったの?
でもこれはダメ。』


断られるのは分かり切っていたからたいしてガッカリはしなかった。


『でもこっちだったらいいよ』


そういって中指にあるもう一つの指輪をあたしに差し出した。
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