疲れ切った心
「それからです。俺は徐々に彼女に惹かれて行きました。お陰で、同じ事を繰り返していた毎日が変わったのです。俺は、彼女に感謝しています。聖南に来てよかった。在校生達には、そういった高校生活を送ってほしい。折角この高校に受かったのだから楽しく過ごして欲しい。その思いを挨拶とさせて頂きます」
感謝するのは私の方だよ。
私を人形の世界から救ってくれた。
感情を持っていなかった私に感情を教えてくれた。
ありがとうじゃ言い尽せない。
式が終わり、卒業生が退場していく。
そして、在校生、保護者と退場した。
シーンと静まり返った体育館。
私は舞台に立っていた。
右から左へとゆっくりと視線を動かした。
沢山の生徒達が目に浮かんだ。
最後に、ココに立って皆のことをちゃんと目に焼き付けておきたかったな。
「珠理」
教室に戻ったはずの悠斗が中に入ってきた。
「まだこんな所に居たのか」
「うん。見てみたかったの、ココからの風景」
「そっか。満足したか?」
「したよ」
階段を下り、悠斗に向かって歩き出した。
「じゃあ行くぞ」
「え?」
突然手を握られ走り出した。
行くって何処に!?