疲れ切った心



「珠理、出来たぞ」


「こっちも出来た」


「じゃあ行くぞ」



アパートの階段を降りて車に乗り込んだ。



「引っ越すか?」


「いっそのこと家でも建てる?」



悠理を抱えて階段を降りるのは結構辛くなってきた。



順調に成長していく娘は体重も増えて行く。



「あぁ~、そうだな」



就職してから5年しか経っていないのに、店長に勧められ店を出したら繁盛した。



「考えとくか」


「だね」



「とくか!」



本当にこの子は悠斗の言葉しか真似しないんだから。



「悠理、今から行く所ではおめでとうって言うんだよ?」


「・・・・?」



首をかしげる悠理。



「おめでとう」



2歳児でも分かる様にゆっくりと言ってみせた。



「いや!」


「・・・・・悠斗」


「な、何か・・・・・?」



ギロッと睨むと背中を小さくした。



「なんで悠理はイヤって言葉を知ってるのかな?」



後ろから顔を出し、ニコッと微笑んで見せた。
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