疲れ切った心

悠斗side



「は~い、笑って~」



再びC組に戻り、珠理と竹下が写真を撮っている。



「珠理ちゃん」



隣に海がいて、突然珠理の名を口にした。



ムカッ



何で海が珠理を下の名前で呼んでんだよ。




「中学からの付き合いだけどお前がムッツリだったなんてな」



山本 海。



中1の時同じクラスになって意気投合し、今に至る。



「ちげーよ」


「ま、分かるけどな。俺も結夢にチャイナ着欲しいって思うしな」



お前もじゃねぇかよ。



「でもあんだけナイスバディーだと他の男がほっとかないだろ?」


「多分な」


「しっかし、ちゃっかり自分のブレザー着せて」



チャイナを着て欲しかったけど、他の男に見られるのがムカついてブレザーを着せた。



「珠理ちゃん結構モテるだろ」


「あぁ」



昼飯食ってる時も、接客してる時もヤらしい目で見られていた。



挙句の果てにはナンパされてるし。



「何嫉妬してんだよ」


「えっ」



声に出したつもりは無かったんだけど。



「ばーか。顔に出てんだよ。悠斗をこんな顔にする子が現れるなんてな」



確かにな。



「それほど好きなんだな。珠理ちゃんのこと」



好き___________



確かに好きなのかもしれない。



廊下でたまに見かける珠理には何の感情も持たなかった。



持てなかったと言った方が正しいだろう。



いつ見ても同じ表情で


同じ笑顔で


愛想良く笑っている珠理に、俺は



あいつには感情がねぇのか?



としか思っていなかった。



だが今は違う。



珠理が素で居る時はコロコロと表情が代わり引きつけられていた。
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