桜吹雪
 次の日。

 今日も雨です。
 咲さんは今日はお昼過ぎに来るそうです。
 午前中は家にお医者さんが来ました。
 今日は月イチの診察の日です。
 「変わったことは有ったかね?」
 お医者さんが訊ねます。
 「いえ。最近は調子が良いです。」
 お医者さんに診てもらっているのは僕です。
 「それは良かった。」
 お医者さんは帰り仕度をする。
 「ありがとうございます。」
 お医者さんは帰り際に、
 「今を思う存分楽しみなさい。人生は一回きりなのだからね。」
 と言って帰って行きました。
 僕はまだお医者さんか言った言葉を、理解できていなかった。

 †

 僕は3年前高熱を出し、1,2週間ほど布団に入ったままでした。
 熱が下がったと思えば今度は吐き気や貧血などで家にこもりっぱなしでした。
 熱が下がって1ヶ月経った診察の日にお医者さんが言いました。
 「私が思うに君は白血病だね。」
 白血病・・・血液のガンと言われている病気。僕の住むこの世界ではまだ治療法が分かっておらず、白血病の存在すら知らない人が居るほど発病率が極めて低い病気だった。
 「白血病の噂は聞いていましたけど、まさか自分が発病するとは思ってもみませんでした。」
 発病率が低い病気だけあって、完璧な治療法も無く、死亡率が高い病気に罹ったにも拘らず、何故か平然としていた僕。
 「いつ死ぬ分からないのに、君は死を恐れないのかね?」
 別に死ぬのは怖くない。怖いのは・・・
 「自分でもビックリです。」
 僕が怖いのは・・・
 「さて一応薬を置いていくよ、足りなくなれば取りにくればいい。いつでも準備しておくよ。」
 そう言ってお医者さんは帰っていった。

 †

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