桜吹雪
それから半年後。
無理な運動を止められた僕は一人で山のふもとに在る川岸に座っていた。
そこは僕の唄を歌う時に来る場所だ。
「音の数々を枕木に、東へ東へ此処まで来た。」
この唄は隣の家に住む魁人(カイト)さんが歌っていた唄。
「出会い、廻り、別れ、歌い、この声は何所まで届くのだろう。」
この唄は少し哀しくなる唄だ。
「哀しそうに歌うんですね。」
後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには女の人が立っていました。
「あっ、咲と申します。唄の邪魔をしてすみません。」
それが咲さんとの出会いでした。
†
「はっ!!」
気づいたら寝てた。
「寒っ。」
縁側で寝ていたので少し雨に濡れていた。
昔の夢を見ていたようです。
懐かしいですね。
咲さんには病気のことは話してありません。
彼女に気を使わせるのいやですし、僕は治ると信じているので。
お昼ごろに咲さんは雨の中傘を差してやってきました。
「今日もご機嫌斜めですか?」
眉間にしわをよせて僕の隣に座る咲さん。
「だって・・・雨が止まないんだもの。」
小さな子供みたいに言う咲さん。
まったく・・・可愛すぎますよ。
「咲さんは雨が嫌いですか?」
僕は咲さんの頭を軽く撫でながら訊ねる。
「別に・・・嫌いじゃぁ無いわ。」
咲さんは僕にもたれてうとうとしだした。
「ここで寝る気ですか?」
すっかり目を閉じて僕に体重を任せている。
「風邪引きますよ・・・?」
僕は咲さんを柱にもたれさせ自室に行き布団敷いてそこに咲さんを寝かせました。
寝ている咲さんに向かって、
「この命が消えても貴方を愛し続けます。」
と、僕は言い、頬にそっとキスをしました。