好きな人の忘れ方







「ご、ごめんなさい」

「・・・遥ちゃん」

「えっと・・・・か、帰ります」

「・・・・遥ちゃん」

「お邪魔しました・・・」





深く頭を下げて、いつもならもう少し居る場所から逃げるようにして帰ろうとした私を家の前まで追いかけてきたおばさんは


怒ってもなくて

泣いてもなくて





ただ、ただ


抱きしめてゆっくりと頭を撫でてくれた









「ありがとう」と「ごめんね」を何回も何回も言って






最後に









「幸せになってね」と




啓太郎とそっくりの顔で言った







その声に、その笑顔に


私は何も言えないまま


家に帰った






啓太郎の姿は見えなくて

どこかほっとしてしまった



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