Knock out!
「ちょっと!マスカラ取れてるよ!」
「えっ!直して直して!」
「私の髪もやってよー。」
クラスに入ると、ほとんどの女子全員が鏡を眺めていた。
どうやら、何もしていないのは私と、もう一人。
ガリ勉青井幸子。
幸子は、そんな女子には目もくれず、一人参考書を開いて勉強中。
「あ、おはよう!麻李に夏樹!」
「夏樹、そのバレッタかわいい!見せて!」
夏樹はやっぱ女子の鏡だねー。
でも、人に合わせるってことをちゃんと知ってるから、こないだまではみんなと同じ、地味子だった。
はあ。
思わずため息。
私もおしゃれ、してみようかなあ…
何の変哲もない、腰まである髪をただまとめただけの自分の髪に触れる。
「どうかした?幸村さん。ちょっとずれてくれなきゃ、後が詰まってる。」
「うわ!!ご、ごめんなさい。って、小松、くん……」
昨日の悪夢がよみがえる。