最低な恋人
普段じゃありえないスピードで準備をして、家を出る。
家の前にいつもいるはずの裕司はやっぱりいなくて、
自分がどれだけ彼を傷付けたのか思い知らさせる。
しょうがない、行くか。
と気持ちを切り替えて歩きはじめようとすると、
「由奈!!」
後ろから呼び止める声が聞こえる。
「ごめん、寝坊して。
行こう。」
彼が自分を拒絶していたわけではないと知ってホッとした。
彼に対する感情が恋愛だのなんだのとは無縁のものだとしても、
幼馴染なのだからもちろん大事だし、失うのは怖い。
今の自分にとって、家族と同じかそれ以上の大きさを占めている。
きっとこの思いを言葉にしたら、裕司と私が壊れ物を扱うように大切にしてきたこの関係は、
跡形もなく消えてしまうんだろう。