掲示板のすみっこで
「…なーんてな」
風が運ぶのは鼻を塞ぎたくなる臭いだけじゃない。低くドスの効いている声は似つかわしいくらい弾んでいた
自分の膝はガダガタと震えてる
「ふっ、またそんなビビッちまって。冗談だろうが」
「冗談、ですか…」
一体、今のやり取りで冗談だと判断出来る人がどれほどいるだろうか
まず、どこからどこまでが?
「まぁ、脅迫紛いをさせるほど悪趣味な冗談じゃねぇっつーことだ」
「…なるほど」
納得したように見せ掛けて、色んなことを理解してない
じゃあ、そろそろと派手なジャケットの襟を正すお客様に聞くタイミングを失ってしまった
「橋本…だっけによろしく言っておいてくれ。またな、桑井さん」
頭を下げて見送る。向ける背から伝わる堂々さにも圧倒されながら、じっと見つめていた
店長に続いてお客様にも褒めてもらえた
バイト終わり
思い出したバックルームで信に繋がる喜びを噛み締めつつ、閉めたロッカーに当てた手の平でガッツポーズを取る
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