掲示板のすみっこで


「……ただいま、」


玄関に座り、足を抱えるようにのろのろと靴を脱いでいると、両足から取り去ったところで背後のドアが開く気配


「あら、健一お帰り。今、さくらと夕飯食べてるのよ」


母親の声を軽く聞き流し、横を通る。階段に向かいかけた直前を声も追いかけてきた


「健一も食べるでしょ?ご飯、よそっておくわね」

「いい」

階段の手すりによっ掛かっていた手が離れる。2階へ上りかけた俺は答えた

「…健一?」

「ごめん。今、食欲ないからいいや…ごめん」


心配そうに覗き込まれるのを避けて、階段を駆け上がった

小さくまた名前を呼ばれた気がするけど、頭の中はいっぱいだった

橋本くんから彼女の存在を知った日と同じくらい、他のことを考えられない


部屋のドアを閉めて、暗闇の中で天井を見つめる

背中をつけて、滑るように座り込むと圧迫されたポケットからこぼれ落ちた

チカチカと点滅する携帯電話。受信した38通のメールは全部「lyric search」、でも相手は『暇人トピ』メンバーじゃない


見知ってはいないけど、自ら関わった人

内容は開いて見るまでもない

サイトにアクセスして全削除。メール通知も解除する


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