掲示板のすみっこで


彼女から注がれる視線が堪え難い

そりゃそうさ、ずっと無言を貫いていたら不審にも思われる

何と言っても自分から話し掛けたのは初めてのことだから

いい加減、無意味に鞄を持ち直し、間を繋ぐのは限界

写真撮影が一段落した彼女を呼び止めたのは数分前

今、それ以上の勇気を出す時が来た


「俺、浅川のことを好きになりました」


穏やかだった風が不意に止み、周りのざわめきがクリアに聞こえる

それでも集中して彼女が何か発するのを待った

もし、瀬野くんに見られたらどうしよう。誰かが彼に告げ口したらどうしよう

口を噤みながら浮かび上がっていた不安は、思いを伝えても消えない


でも、それよりも

俺は言った、言ってしまった

その気持ちが強かった


「隣りの席になって、一緒に日直をやった時から気になって…」

目を見開いて驚く彼女。付け加えると「…あぁ、そうだったんだ」と考えを巡らせた


「でも、私、今付き合っている人がいるの」

「そう、なんだよね…ごめん。知ってるんだ」



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