掲示板のすみっこで


「…わかりました。橋本くんと話せる時に話してみたいと思います」

「本当か!?ありがとう!ほんとにありがとう!」


思い浮かんだ考えもこんなに頼られては言えなくなる

気づかれないように小さく肩を竦めた


「そういえば店長」

「ん、どうしたー?」


振り返るその人の表情は、一つ肩の荷が下りたように晴れ晴れしい。なんて変わり身が早いんだろう、と思っても言えるわけはなかった


「あの、今まで聞こうと思っていたんですけど、何で僕は橋本くんの指導係に指名されたんですか?」


何回か腑に落ちないと考えてみても答えらしい答えはない

今聞いてみるのも良い機会だろう


「理由って、ありますか?」

「理由かぁ」


店長は暑くも寒くもないバックルームで、額に汗を浮かべながら宙に視線を向けた


「あの時、あの場に桑井がいたからかな」

「……あの時ですか?」

「あれだよ。橋本がここの面接に来た日、レジに入ってただろ」

「あ、はい。入ってました。いきなり商品持たずに茶髪の子が近づいてきて、」

「そうそう、すごいじーっと見てきてた」



確かに見てきた。でもあれはただ見ていたというよりも睨んでいたに近い

数日前にチンピラ風お客様へ向けた視線のように



その眼差しを思い出して、体がブルッと震える


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