掲示板のすみっこで



「ただいま…」

いつものように帰宅すると、玄関にまでパチパチと跳ねる音が聞こえてきた


「あら、健一お帰り」

「ただいま。母さん何してんの」

リビングに入ると、音は大きさを増す。母さんがその前で持っているのは先端が金属で細長い箸

あれは確か、


「見てわからない?エビフライよ、エビフライ」

あぁ、やっぱりと納得する。揚げ物を作る時は決まっていつもあの箸だから


「海老が安売りしてたのよ。それにさくらが食べたいって言ってたでしょ?」


だから、と話ながらも一つ一つ器用に揚げていく


「…さくら、今日は夕飯食べるの?」


こんがりと良い色に染まった衣に包まれる海老。どんどんと白い大皿に積み上がっていく

「まだ連絡がないからわからないわ」

一旦手を休めて脇に置かれた携帯電話を確認する。まだメール来てないことがわかるとまた揚げる作業を再開した

帰ってきて、荷物を持ったままだと思い出して二階に上がる。自室へ向かう途中に通ったさくらの部屋の前で思わず、少しだけ立ち止まってしまった


最後にさくらと面と向かって話したのはいつだろう


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