掲示板のすみっこで

サクッと噛みごたえある音が、静かなリビングでは嫌に目立つ


「あ、ありがとう」

お代わりはと聞かれて渡したお茶碗が手元に戻ってきた

食事中にテレビを付けないのは幼少期からの決まり。だからいつも誰かが話さない限り、沈黙を保ったままの食卓だ


暗黙のルールだけど父親も小さい時、田舎でそう育ったと聞いたことがあるから習わしなんだろう。その父親は去年から単身赴任で他県に住んでいる。仕事が忙しいらしく年始にも戻ってこなかったからしばらく会ってない


そしてもう一人の家族、妹のさくらもここ最近は帰りが遅いせいで夕飯は決まって母親と二人きり



これと言って話すことのない今、カチャカチャという物音以外は静かな時間が過ぎていく




バタンッ


玄関から誰か入ってきた音。反応して振り返るけどドアは閉まったまま

母さんが立ち上がる


「お帰り、さくら？」


ドタドタと階段を駆け上がる音が返事のように声は返ってこない


「さくらなんでしょー？」


廊下へ顔を出して階段へ呼び掛ける。気怠そうな返事が壁に反響してリビングにも届く


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