掲示板のすみっこで



「……暑っ、」


春の訪れを感じさせながらも冷え込みは続く今、こんなことを呟くなんて思わなかった


少し前だったら、コンビニのおでんのだし汁が手にかかったり、肉まんの入ったケースの金属部分に触れた時、後はホットドリンクの補充時くらい、それを今、発してしまうなんて


額を流れる汗を拭いながら、そりゃ布団被ってたら暑くもなるかと苦笑いする



「…あっつ、」


バサリと剥がした布一枚は汗という水分を含んでいるせいか、ひどく重かった。もがくように手足を動かしてようやくひんやり冷えた空気に触れる


吸って、吐いてを繰り返す呼吸。落ち着いてくる脈拍


徐々に暑さは引き、ごちゃごちゃしていた頭が冴える


どこと無く沸き上がる眠気を振り払うようにごろりと寝返りを一つ、その途中で違和感

スムーズに転がっていた頭部にボコッと当たった小さな違和感


ごろり、もう一回寝返っても同じ感覚が伝わった


不思議に思って物陰に手を突っ込む、指先が捕らえる固い感触、掴んで引き出した


手の中には見覚えのある白い機械



いつも定位置の机の上にあるはずの携帯電話が、枕の下にあった


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