掲示板のすみっこで
「これ、動かない」と指で示す橋本くん。どうやらしばらくレジ口を開けっぱなしにしていたからエラー表示されているらしい
「差額は14円だ」
キャンセルボタンを押して、レジから小銭の1円四枚と10円を一枚を取り出して、男子学生に渡す
「こちらが差額の14円です。大変失礼しました」
目を見て謝罪すると「あ、はい、どうも…」と言って財布に収めた。レジ袋の持ち手を揃えて「お忘れなく」と差し出すとそそくさと去っていかれた
「ありがとうございました!」
いつものように退店のメロディーが流れる。その爽やかさに見合うようにちゃんとお客様にお詫びが伝わったか不安になる
「たかが14円くらいでがたがた言うなっつーの……」
さっき、思い切り言えなかった不満をぶつけるように床を踏み鳴らした
誤って転がっていたガムシロップを踏ん付け、舌打ちの後にため息を吐く
「橋本くん、そういうことじゃないよ」
「…え、」
「多く割り引かれるからとか、少ないからいいとかじゃなくて、正確にやることが当たり前なんだから」
カップからはみ出たガムシロップを靴裏で拭いながら、彼はレジ確認をする俺を凝視する
「別に正しく出来なかったからって落ち込んでくれなくていい。でも、反省はして。それが橋本くんが同じことをしない為だから」
「………」
「あとは、お客様の目を見て接客してほしいかな」
ガタンとレジを閉めた。振り返るとすぐ近くに唇を噛み締める橋本くん。じっと見上げると、またいつかのように睨みつけられた。切っ先のような目つき。だけど、逸らさない
俺も変わるから
だから、君も…………ね?
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