掲示板のすみっこで


「はぁー…」

バイトが終わり、バックルームで丸椅子に座って、後ろのロッカーに頭をつけた


天井が映る。チカチカと一カ所明かりが危うい蛍光灯一つと隅には出来ていたクモの巣が家主を失い、どんどん小さくなっていく


疲れた。疲れたのに目がその景色を映して、脳に見たことの信号を送る



−−ありがとうございましたぁー


ドア一枚隔てた向こう側でお客様が減った夕暮れ時、最近、日が落ちるのがゆっくりになったみたいだ


背筋と手首を伸ばしたり、反らしたりしてロッカーにぶつかりながら一呼吸


さて、そろそろ帰るか


相変わらず寄り道はしないけど、前までバイト終わりすぐ帰っていたのと比べると、この頃は少しまったりと帰り支度をしていた


着替えを済ませてカーテンを引き、靴を履き替える

つま先をトントン鳴らし、シフト表の並ぶブックスタンドが置かれたテーブルに手をつく


次のバイトは明後日、10時から17時


大学生になったら必要だからと言われて買った手帳に書き込む。その目の端に何かが映った


黒い物体、テカっている、少し動いた


一瞬、あまり得意じゃない”ヤツ”かと警戒して向くと携帯電話だった


何の変哲もない機械に驚いた自分が、よくさっき橋本くんの睨みに堪えられたな


自嘲しながら、着信を伝えようと振動してテーブルから落ちそうになるそれを拾い上げた



「…あれ、」


よく見たらそれは、橋本くんの携帯電話だった


.
< 43 / 137 >

この作品をシェア

pagetop