掲示板のすみっこで
第2章
聞き込み
メインディッシュのシチューを食べ終え、風呂に入る。夕飯前の母親と妹のやり取りを不審に思いながら自室のドアに手を掛けた時、呼び掛けられた
「ねぇ、」
「ん?…さくら?」
黒髪だったのを地色だと言い切れる程度に茶色く染めた、俺よりも早く風呂から上がってまだドライヤーでも乾いてない髪を下ろしているさくら
高校生だからと大人ぶっていてもどこか幼さは残り、嫌がると思うけどやっぱり妹なんだよな
「どうした?」
「ちょっと、聞きたいことがあって…」
久しぶりにさくらから話し掛けられて、妙に複雑な気分になる
それは以前に近所のコンビニでアルバイトを始めたと言わなかったせいで鉢合わせし、一緒に来た友達に兄だと気づかれたらどうしてくれるんだ、恥ずかしいと怒られたから
幼少期は気にもしなかったことが年を追うごとに過敏になり、兄という存在は除け者
実に二年振りの会話というとそれは質問だった
「聞きたいこと?」
「今日、バイトしてるコンビニの近くで話してた人…って、誰?」
自室のドアによっ掛かっていたさくらは一歩近づいてくる
「え?コンビニで話してたって…あー、橋本くんか」
「はし…もと、くん?」
「うん、橋本くんはバイトの後輩。忘れ物してたから届けに行って、ちょっと話したんだ」
「橋本くん……」
確かめるように復唱していて、後半部分はあまり聞いてないみたいだ
橋本くんがどうしたのか、なんて野暮なこと聞かなくても予想はつく
話すことを避けてきた兄に対して自らやって来たんだからきっと、それは確かなこと
「ねぇ、私、その橋本くんって人に一目惚れしたの」
ああ、ほら、やっぱり
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