掲示板のすみっこで
「橋本くん」
先手必勝。案ずるより生むが易し
そんな慣用表現を思い浮かべながらも内心は次、何を言うべきか戸惑ってる
携帯電話をまた取り出した橋本くん。いつもと違って「なんすか」とすら反応されなくて調子が狂うのもあるけど、それ以上に何と言ったらいいのか
「橋本くん!」
「…っ、!」
橋本くんの座る横の丸椅子に突っ込むように近づくと、そのまま彼にぶつかり、持っていた携帯電話が落ちる
「痛っ、ごめ…ん。あれ、携帯」
「っ、見ないでください!」
人は禁止されればされるほど意識したり、好奇心が沸き上がったりする。そんなことを聞いたことがあるし、経験もある。今この瞬間も
開いたまま床に転がる携帯電話を拾い上げた
「…これは、」
そこには橋本くんと仲良く映る女の子がいた
「…み、見ましたか……」
「この子、」
「…っ、見ないでほしいって言ったのに……」
「…ご、ごめん」
「謝られてもどうしたらいいか……で、でも別にあれですよ。あっちが勝手にせっかくだからとか言っただけで俺は、全然そんなつもりなくて、だから待ち受けは嫌だったのに…」
「待ち受け…?プリクラじゃなくて?」
「えっ」
対象物を指差す。ディスプレイの右上に張られた小さな写真。それは撮りに行った経験はなくても知っているプリクラという物。そのフレームの中で楽しそうに笑う二人が、小さくても認識できる
「これって、彼女…だよね?」
「……はい、そうですが何か」
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