掲示板のすみっこで



「橋本くん」


先手必勝。案ずるより生むが易し

そんな慣用表現を思い浮かべながらも内心は次、何を言うべきか戸惑ってる

携帯電話をまた取り出した橋本くん。いつもと違って「なんすか」とすら反応されなくて調子が狂うのもあるけど、それ以上に何と言ったらいいのか


「橋本くん!」

「…っ、!」

橋本くんの座る横の丸椅子に突っ込むように近づくと、そのまま彼にぶつかり、持っていた携帯電話が落ちる


「痛っ、ごめ…ん。あれ、携帯」

「っ、見ないでください!」


人は禁止されればされるほど意識したり、好奇心が沸き上がったりする。そんなことを聞いたことがあるし、経験もある。今この瞬間も


開いたまま床に転がる携帯電話を拾い上げた


「…これは、」

そこには橋本くんと仲良く映る女の子がいた


「…み、見ましたか……」

「この子、」

「…っ、見ないでほしいって言ったのに……」

「…ご、ごめん」

「謝られてもどうしたらいいか……で、でも別にあれですよ。あっちが勝手にせっかくだからとか言っただけで俺は、全然そんなつもりなくて、だから待ち受けは嫌だったのに…」

「待ち受け…?プリクラじゃなくて?」

「えっ」

対象物を指差す。ディスプレイの右上に張られた小さな写真。それは撮りに行った経験はなくても知っているプリクラという物。そのフレームの中で楽しそうに笑う二人が、小さくても認識できる



「これって、彼女…だよね?」

「……はい、そうですが何か」


.
< 53 / 137 >

この作品をシェア

pagetop