掲示板のすみっこで
いつもとちがう
「あれ、メール?」
インする前に電源を切ったきりの携帯電話を久しぶりに開くと、二通のメールが届いていた
どちらも「lyric search」、そして、黒翼からだった
家まで我慢できなくて危ないけど歩きながら操作する。案の定揺れで、時折の逆光で見えにくい画面
でも、なんとか読めたのは一通目がたった一行だったから
「……黒翼、」
胸がざわめく、モヤモヤする、二通目を読んでもそれは解消されない。余計抱いた疑問が膨らむだけ
「ただいま…」
出掛けているのか、誰からの返答もないまま靴を脱ぎ捨てる音が大きく響いた
二階への階段で重い足を引きずるように上がる
「あ、」
「……ただいま」
「…お帰り」
ドアか靴か足音かはたまた気配で察したさくらが部屋から出てくる
「………」
「あ、お母さん、今出掛けてる」
「そうか」
用件がたかたがそれだけなわけがない。ただ何となくという理由もある。でもしばらく避けてきた相手に声を掛けるのに、それでは納得いかない
「夕飯の買い物かな。でもメール…なかったな。出掛けるのが億劫じゃなかったからかな」
ポケットに入れた携帯電話。形や存在を確かめるみたいに握った。手の平に汗をかいてることに気づいた
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