掲示板のすみっこで


椅子を引く音とパン皿を置く音が響くくらい静かな我が家

こういう二人きりという状況下は久しぶりだった

中学生になった辺りからさくらは俺と留守番を頼まれそうになったら、母親が家を出るまでは大人しくしていたのに、出掛けたとわかりや否や遊びに行ったり、友達を招いてわいわいがやがや騒いだり、後者の場合は絶対に部屋から出ないように厳しく言い付けられていた

あぁ、そんなこともあったな

パンと一緒に思い出も噛み締める


そうやって距離が開いた俺たちを繋いだのはバイト先の後輩、妹の好きになった相手。そうじゃなかったら多分、こんな一言二言も話してない。でも彼には……



「…ねぇってば!」

テーブルが揺れて、鼓膜が揺れて、その二つの理由はテーブルを叩いたこと、大声を出したこと

「…聞いてる?」

そして、原因はさくら

「えっと…なに?」

盛大なため息をつかれて胸の奥が締め付けられる

良からぬことをしたんだと自覚さぜるを得ない

「今日って……アルバイトあるんだよね」

「う、うん」

「…そう」


確認を終えて、赤らむ頬。素っ気なくしてもどこか嬉しそうで、昨夜はあんまり考えなかったけどキララも先生を思ってこんな表情してるのかな


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