掲示板のすみっこで


この前とは状況が違い、上機嫌で穏やかな口調であっても気は抜けない。体は強張り、右手が持つタバコの先の煙が浮かぶ一部しか見れない

バクバクと暴れる心臓


「…この前のあいつ、どうだよ」

突如、ピリッと空気が引き締まる

お客様が口にされた”あいつ”

それが指す物は決まってる。あの時、店にいたのは二人

一人は俺、だからもう一人は……


「この前、ちょっと覗いたけどあいつ……何だっけ、名前は思い出せねぇけど接客態度がクソだったやつ」

「は、橋本くん…です」

「あー、橋本っつーのか。そういや名前知らなかったわ、ははっ」

豪快な笑い声を聞いても緊張は解けない。寧ろ響いて、先走る。早く真相が知りたい

「あ、あの…橋本くんが、また失礼なことをしてしまいましたか?」

「いーや、そいつ変わったんだなって」


出来る限り、目を合わせようとしながら不快にならないギリギリで外していた視線

その両目で正面からお客様を捉えた


……変わった、橋本くんが?

この、いかにも厳しい人から見てもわかるくらいの変化ってこと?


.
< 98 / 137 >

この作品をシェア

pagetop