失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
う…ウソ…だ…
僕は頭の中が真っ白になった
一番起こって欲しくないことが
僕の前で起きていた
一番否定したかった予感が
また僕の目の前で…
僕を買ったくせに
殴ってつないで携帯を取り上げて
僕は殺そうと…してるのに…
僕はあんたを…そしてあんたも僕を
「ウソ…だ…こんな…ヤク漬けにし
て…客に犯させてっ!」
僕は知りたくなかった
この人が僕を…
それだけは
知りたくなかった…!
「そうだ」
男は声色ひとつ変えずに答えた
「今だってそれは変わらない」
男はもう一本タバコの火を着けた
「俺がお前を惜しかろうが死なせた
くなかろうが」
男の声には淀みがなかった
「組織の意志と俺の意志が食い違う
こともある…そんなことは分かりき
ってることだ…今さらお前になんか
に説明する必要がないくらいにな」